宿泊業が生産性を向上させるためには、「人手不足の解消」「業務効率化」「付加価値の向上」の3つの観点から取り組むことが効果的です。以下に、具体的な施策を整理します。
1.業務の効率化・自動化
1-1.デジタル化・IT導入
・セルフチェックイン・チェックアウト端末の導入
→ フロント業務の省力化、人件費削減
・スマートロック(スマホキー)や顔認証システム
→ 鍵の受け渡し不要、スタッフの対応削減
・クラウド型PMS(宿泊管理システム)の活用
→ 予約管理・顧客管理・料金調整を自動化
・マニュアルの整備
・食器の収納位置の明確化、備品在庫の見える化
1-2.清掃・リネン管理の効率化
・清掃スケジュールの最適化(AI導入)
・外注化やロボット掃除機の活用
・水光熱費の削減
2.人材活用の最適化
2-1.多能工化(マルチタスク化)
・一人のスタッフが複数業務(例:フロント+清掃)を担当できるように教育
→ シフト調整が柔軟に、少人数で対応可能
2-2.外国人材・インターンの活用
・特定技能や技能実習制度などを活用
→ 観光需要に対応できる体制づくり
2-3.離職防止・モチベーション向上
・フレックスタイム・ワークシェアリング導入
・教育・研修制度の充実によるキャリア形成支援
3.収益性・付加価値の向上(=生産性の分母向上)
3-1.ダイナミックプライシングの導入
・需要に応じて宿泊料金を自動調整
→ 稼働率が低くても収益を最大化
3-2.サブスクリプションや中長期滞在プランの展開
・テレワーク、ワーケーション、留学生などを対象
→ 客室の「空き」を減らす工夫
3-3.地元との連携(地域観光資源とのパッケージ販売)
・地域食材の活用、地元アクティビティ付きプラン
→ 単価アップ+差別化による集客強化
4.データ活用による意思決定の高度化
・顧客属性・行動データを活用したサービス改善
・レビュー・口コミの分析による問題点の早期発見
・競合分析ツール(例:競合ホテルの価格・稼働率)の導入
5.業態転換・新モデルの模索
・省人型ホテル(無人・簡易宿所)への業態転換
・サテライト型・多拠点運営(本部一括管理)
・多角化(カフェ運営、地域ツアーなど)による付加価値提供
6.事例集
観光庁が「宿泊業の生産性向上事例集」を出していますので、参考にご覧ください。
まとめ
宿泊業の生産性向上=「少ない人数・資源で、より多くの価値を生み出す」ことです。日常業務が忙しく生産性向上に取り組む時間が取れない場合もあると思いますが、長い目で見れば、生産性向上は日常業務を楽にしてくれます。そのためには上記のように、テクノロジー活用+人材戦略+収益戦略の組み合わせがカギとなると考えます。