宿泊業に必須となるホスピタリティサービス工学とは

宿泊施設関連協会(JARC)は2020年1月29日、賀詞交歓会を開催した。その中で、「宿泊産業に必須となるホスピタリティサービス工学という視点とは」というテーマでパネルディスカッションが行われた。

パネルディスカッションの登壇者は次の4名。

観光庁観光産業課観光人材政策室参事官小熊弘明氏
帝国ホテル東京情報システム部部長花井伸二氏
雪国観光圏代表理事井口智裕氏
宿泊施設関連協会会長林悦男氏

ディスカッションでは、工学(テクノロジー)を業務に導入することの必要性が訴えられた。

例えば花井氏は、生産性向上と人材不足への対応のためには「お客さまから見えない部分は徹底的にICT化・機械化し、人がやるべきこととやらなくてもよいことを分ける必要がある。接客スタッフがいかに接客に集中できるか、ハイテクに支えられたローテクなサービスこそ重要」と述べた。

林氏は、「生産性向上のためにこれからのホテル・旅館が必要とするスタッフは、工学の視点からサービスづくりができる人材『ホテルエンジニア』だ。マーケティングとテクノロジーシステムから導かれたデータを基に課題を解決して、ブランド力や販売力を強化できるスタッフ。そして、パーソナルサービス、ヒューマンサービス、テクノロジーサービスを論理的に融合させて、お客さまに効率のよいサービスを提供できるスタッフが必要となってきている」と話した。

以上の発言から、1つ目のポイントとしては、宿泊業にはテクノロジーが必要ということだ。その背景には、人手不足がある。日本の労働人口が減っているだけでなく、宿泊業の賃金が低いことが人手不足に拍車をかけている。例えば2019年冬のボーナスは18業種中最下位の57万円だった(以前の記事はこちら)。

テクノロジーを導入してどのように人手不足を克服するかは以前の記事にも書いたとおりだ(以前の記事はこちら)。

そして、2つ目のポイントとしては、現場のスタッフがテクノロジーを使いこなす必要があるということだ。機械やプログラムは人からの命令がなければ動かないため、現場のスタッフがそれを使えなければ宝の持ち腐れだ。それが実現して初めて、現場のスタッフは、人がやるべき仕事に集中することができる。

人手不足は宿泊業を中心に進行している。日本の人口ピラミッドを見る限り、人手不足は悪化する一方だろう。現場のスタッフの負担を和らげて賃金上昇につなげるために、テクノロジーの導入は待ったなしだ。

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